私の好きな本「きのこいぬ」

緊急事態宣言による外出自粛中の自宅からこんにちは(現時刻2020年4月21日15時33分25秒)。もしかすると、この記事がWeb上に載る時には宣言並びに自粛が解除されているかも知れませんが、現時点では私は自宅待機中です。

皆さんも重々承知とは思いますが、家に居なくてはいけないとなると、必然的に出来る事が限られてきますね。私はもっぱら趣味のお菓子作りをしていますが、今朝、TVで「たこ焼きプレート」、略称「たこプレ」で製作出来るお菓子を紹介していました。うーん、欲しい。たこプレ。

皆さんは「たこ焼き」と言うと、何を思い浮かべますか? ベタにぶつ切りの蛸? 友人とのたこ焼きパーティー? それとも……謎のピンク色の「きのこ」?

最後のは意味不明ですって? いえいえ、今日紹介するこの本を読めば、きっと「たこ焼き」=「ビビットピンクのきのこ」になりますよ。

さて、そういう訳で、今回紹介する本は「きのこいぬ」(蒼星きまま、2011、COMIC リュウ、株式会社徳間書店)というタイトルの漫画本です。

主人公はホラー絵本作家の「夕闇ほたる」という男性。両親を早くに事故で亡くし、引き取り手であった祖父も亡き後、「はなこ」という愛犬と共に生活を送っていました。しかし、はなこも天国に旅立ってしまい、それ以来無気力に人生を生きている彼。自宅の庭にまピンクのきのこ(・・・)が生えていても心此処に有らず。「全然描けないんです」(蒼星きまま、2011、p.8)と、ファンからの質問にも上の空です。

そんなある日、夜中に目が覚めたほたるが何となしに縁側に行くと、存在を忘れていたきのこが目に入ります。

警戒色は見つけやすい等という事を考えていると、なんと、急にきのこがぶるぶるゆっさゆっさと震え始めます。そうして、土まみれで地面から現れたのは、片耳がきのこの笠になった可愛らしい犬(の様な生物)。後に「きのこいぬ」と名付けられる生き物でした。

このお話は主人公である「ほたる」が、謎の生命体「きのこいぬ」と出会った事によって、自身を見つめ直したり、己の世界を広げていったりするお話です。優しい世界観や空気、ほたるの心の機微がきめ細やかに描かれている所が、とても印象的です。そして、何と言ってもきのこいぬが可愛い。見た目もさることながら、温かな心の持ち主でちょっぴり自由気ままなきのこいぬが、私は好きです。

犬派、猫派、兎派等々、動物好きには様々なジャンルがありますが、きのこいぬはそういった垣根無しに、心をほっこりとさせてくれる愛らしい存在だと思います。

勿論、動物が特別好きではなくても、この作品は読み物としてかなり面白いお話です。前述の一人と一匹(?)以外にも、個性豊かな登場人物が出てきますよ。

この作品は最初の数話と最新話、スピンオフ作品がWeb上で公開されているので、是非読んでみてください。

え? 結局、「きのこいぬ」とたこ焼きとの繋がりは何だったのかって? それは、読んでのお楽しみです。

満月兎

引用文献

蒼星きまま(2011).:「きのこいぬ」p.8. COMIC リュウ 株式会社徳間書店