在宅訓練の成果報告 その3

『大河ドラマ 青天を衝(つ)け 渋沢栄一のすべて 宝島社』を読んで

大河ドラマ 青天を衝け の主人公であり日本における資本主義の父と言われた渋沢栄一。
いったいどんな人物だったのか?
前回の読書感想文の和歌の中でも触れたのだが、渋沢栄一の生き方に興味を持ったので、今回はその人生・経営哲学の一端に触れたいと思う。

思想の根底にあるのは~『論語』
渋沢栄一の思想の根底には『論語』があったと言われている。『論語』とは中国の古典で、春秋戦国時代の思想家の孔子や、その高弟の言葉が記されている書物である。
彼は教育熱心だった父親の影響で幼い頃から本を読み、『論語』にも通じていた。『論語』には人の生きる道や道徳、考え方などが述べられており、現代の社会人が読んでも参考になる不朽の古典である。栄一は実業界に入ってからも事あるごとに『論語』を引き、晩年に至るまで自分を律することを忘れなかったという。

(以下抜粋)「利益を追求するのは間違いではなく、むしろ積極的にやるべきだ。それこそが国を富ませ、国を強くするもとになる」と説く一方で、利益を求め過ぎて道徳心や倫理観が失われないように『論語』の教えを取り入れたのだ。
現代のビジネス界においても、自社や自分の利益を優先し過ぎるあまり、自己規律が甘くなったり、下請けや従業員に無理を強いたりする者がいる。だからこそ、栄一が説き、実践した「論語による事業経営」は、今も必要とされているのだ。

これを読んだ時、まさに現代に必要な言葉だと思った。このことはおそらく現代社会人の多くが経験しているだろうと思われる。利潤追求のあまり夜遅くまで従業員に無理強いさせている経営者や倫理観を失った経営者たち。そして今や国家がそうなってしまったのではないかという危機的状況の現実。今こそ渋沢栄一の説く「論語による事業経営」とその実践が求められているのではないかと思う。

栄一はまた幼い頃から『論語』に親しむ一方で、藍葉の買いつけなどの家業にも勤(いそ)しんでいたため、一見かけ離れたように見える『論語』と算盤(そろばん)(ビジネス)にも実は近いところがあることを早くから察知していた。
『論語と算盤(そろばん)』は渋沢栄一の代表的な著書である。この本は、「利潤と道徳を調和させる」という経済人が成すべき道を示した、と言われている。現代日本語訳にもなっているので、ご興味ある方は一度、手に取ってみてはいかがでしょうか?    C.K.